実例集

実例ケース1

認知症/悪徳商法/保佐開始/遺言公正証書/アパート管理

A子さんは、会社を定年退職後も自宅併用アパートにて暮らしていたが、加齢による認知症となり、悪徳商法の被害にあった。そのため、親族の方から相談を受け、早急に保佐開始及び代理権付与の申立を行った。A子さんは、その後、グループホームに入所し、悪徳商法の被害に遭うことも無くなり、平穏に暮らしている。自宅併用アパートは、保佐人によって、地元の不動産会社と管理業務委託契約が締結され、毎月家賃収入が得られている。

以下に、おもな後見事務(財産管理)の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 自宅兼アパート
1,444万円
金融資産
5,000万円
株式
110万円
負債  
0円
純資産  
6,554万円
評価(概算)
収入 老齢年金
149,574円
アパート家賃
80,000円
利子・配当など
51,334円
支出 Gホームなど
140,000円
税金・公共料金
12,268円
利益  
128,640円

実例ケース2

知的障害/後見開始/障害基礎年金(2級)/障害者自立支援法/生活保護

B子さんは、生まれつき脳性麻痺という知的障害者である。そのため、利用施設から後見開始申立を勧められ、後見が開始した。収入は、障害基礎年金(2級)と千葉市福祉手当だけである。私が後見人に就任した後、利用施設の付添い人より、本人のために①冬物のブルゾン②靴③中古のカラーテレビを差し入れてほしい旨要望され、①と②は宅急便で送ったが、③はいまだ送ることができない。障害者の経済状況は厳しく、まったく余裕は無い。また、障害基礎年金は今後年々減額されることが確定しており、2006年4月1日から施行される障害者自立支援法によって、施設利用者負担金(1割)の上限が無料から15,000円へと増額され、反対に千葉市は福祉手当を月額14,170円から10.000円へと減額した。障害者自立支援法は、生来の障害者に対して、月額最大30,000円程の負担を増額させ、あらゆる福祉制度を利用しても、生活保護を受けざるを得なくなった。

以下に、おもな後見事務(財産管理)の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 預貯金
57,647円
負債  
0円
純資産  
57,647円

【2006年3月まで】

評価(概算)
収入 障害年金(2級)
66,208円
千葉市福祉手当
14,170円
支出 グループホーム
38.590円
作業所への通勤費
5,000円
日常生活費など
12,425円
傷害保険料など
2,500円
利益  
21,863円

【2006年4月から(生活保護を受給する前)】

評価(概算)
収入 障害年金(2級)
66,008円
千葉市福祉手当
10,000円
支出 グループホーム
71,275円
作業所への通勤費
8,800円
日常生活費など
14,000円
傷害保険料など
2,500円
利益  
-20,567円

実例ケース3

脳梗塞/後見開始・親族後見人/年金受給権の消滅時効/先代の遺産

Cさんは、一人暮らしをしていたため脳梗塞で倒れたが、翌日、電話に出なくなったために心配して尋ねてきた親類に発見された。すぐに入院し治療を行ったが、重い脳血管障害が残ったため、長男を後見人とする後見が開始した。本人は千葉県庁職員OBであったため地方職員共済組合から年金を受給していたが、念のため、社会保険事務所にて後見人就任の届出をしたところ、国民年金・厚生年金老齢給付金が受給できることを知らされ、直ちに必要書類を整えて裁定請求を行った。その後、年金証書が送付され、裁定請求の日から5年前までの未受給の年金約500万円が振り込まれたが、それ以前の年金約500万円は時効により受給権がすでに消滅していたため受給できなかった。本人の記憶が喪失しているため、株券もすべて所在不明であり、また、先代の遺産分割協議もまったく行われていなかったため、今後、後見人によって20名を越える他の相続人と協議をする予定である。

以下に、おもな後見事務(財産管理)の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 不動産
273万円
不動産(遺産)
100万円
金融資産
2,741万円
株式
500万円
負債  
0円
純資産  
3,614万円
評価(概算)
収入 老齢年金
269,284円
利子・配当など
50,000円
支出 Gホームなど
58,342円
税金・公共料金
72,821円
利益  
188,121円

実例ケース4

任意後見契約/弟子と養子縁組/脳梗塞/遺言公正証書/遺言執行者

Dさんは、真面目な職人であった。実子はいるが、娘のため、もう20年以上も会っていない。そのため、弟子の男性と親子のようにして暮らしている。ある日、お店の隣地にマンション建築計画ができたので、弟子の男性が説明会に出向いたが、法律上の親子でないため、Dさんの代わりに交渉することができなかった。そこで、養子縁組をすることを考えたが、Dさんの実子への遠慮もあって、まず任意後見契約と任意代理契約を締結し、代理人となって交渉に臨んだ。その後、暫くしてから正式に養子縁組し、晴れて法律上の親子になった。
ある日、Dさんがお店にやってこないため、息子(養子)がマンションを尋ねるとDさんが倒れており、すぐに救急車で病院に運ばれて検査したところ、脳内で3ヶ所梗塞が起きていることがわかった。言語障害もあり、右腕はほとんど自力では動かない状態であったが、幸いにも聴力や思考力・判断力はあり、こちらの問いに対して、「うん。うん。」とうなずくことは可能であった。そこで、今後のことをDさんに正直に話して遺言公正証書を作成してもらうことにした。後日、公証人に病院まで出張してもらい、息子(養子)にお店の承継に必要な財産などを相続させることと息子(養子)を遺言執行者に指定することなどを内容とする遺言公正証書が作成された。
実の親子でなくても、互いに「おやじ」「○○○○(名前)」と呼び合い、伝統を伝承させていくという正直な2人には、法律や制度もすべて味方になるものだ、ということを教えられました。

以下に、おもな財産の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 不動産
4,113万円
金融資産
5,211万円
負債  
0円
純資産  
9,324万円

実例ケース5

うつ病/保佐開始・代理権付与/福祉タクシー/祭祀と遺産分割

E子さんは、夫婦共働きで暮らしてきたが、子は無く、数年前に夫に先立たれてからは、うつ病の症状が顕著になり入院した。退院の見通しが立たないため、親族の申立により保佐が開始した。その後、特別養護老人ホームに入所して、E子さんは治療に専念している。
治療は、2週間に1回、ホームから親族の自家用車で通院しているので、福祉タクシーの利用を勧めたが、E子さんには、介添人が2人必要であり、普通の福祉タクシーは本人と運転手さんが乗ったら、介添人は乗れないらしい。そこで、仕方なく親族が自家用車で送迎している。
E子さんには、亡くなった夫の遺産について、他の相続人である義理の兄弟達との間で、遺産分割協議がなされていない。そこで、保佐人が予め遺産分割に関する代理権を取得していたので、法定代理人として協議し、その結果、祭祀については義理の弟が承継するが、その他の遺産については、すべてE子さんが相続することになった。現在、自宅の名義もE子さんとなり、財産管理に関する問題は解決した。

以下に、おもな後見事務(財産管理)の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 自宅
403万円
預貯金
880万円
負債  
0円
純資産  
1,283万円
評価(概算)
収入 老齢・遺族年金
172,209円
利子・配当など
77円
支出 特養ホームなど
96,470円
税金など
10,785円
利益  
65,031円

実例ケース6

アルツハイマー病/要介護3/後見開始申立/会社清算

Fさんは、夫婦で食堂を経営していたが8年程前に妻を亡くしてから少しずつ認知症状が表れてきた。Fさんは娘夫婦の自宅で同居を始めたが、神経科病院への定期検診によってアルツハイマー病と診断された。その後、「ひきこもり」のような状態になり、デイ・サービスの利用を考えて、要介護の認定を請求したところ「要介護3」と認定され、今後のFさんと娘さんの家族のことを考えて、娘さんから後見開始申立を行った。  
この依頼によって、アルツハイマー病が非常に恐ろしい病気であることがわかりました。誰にでも発症する可能性のある病気であり、また、防ぎようのない病気ですので、高齢の方は、このような実例もあるということを知っていただきたいと思います。
Fさんが経営していた食堂は有限会社であったが、すでに廃業しているので、今後は清算する予定である。

以下に、おもな後見事務(財産管理)の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 賃貸アパート
2,847万円
預貯金
108万円
満期保険金
500万円
負債 アパートローン
587万円
純資産  
2,868万円
評価(概算)
収入 老齢年金
58,325円
アパート家賃
381,936円
支出 食費・医療費
55,000円
税金・公共料金
79,700円
ローン返済金
202,067円
利益  
103,494円

実例ケース7

母の死/統合失調症/兄の死/生活保護開始/後見開始申立

Gさんは、中学2年生のとき母を亡くした。それから、幻覚や幻聴などを訴えるようになり、統合失調症(以前は精神分裂病と呼ばれた)と診断されてから、すでに40年以上も入院している。数年前に入院費をずっと援助していた兄が亡くなり、親族ではもはや援助できる者もいないので、今後のGさんの生活について相談にきた。
Gさんの収入は、障害年金(2級)だけであり、もちろん働いたこともなければ、今後働くことも不可能である。先ず、年金額を(2級→1級)とする改定請求をしたが社会保険事務所から改定事由不該当通知書が送付されてきたので、相談者と共に福祉事務所へ行き生活保護開始申請をした。その後、保護決定(変更)通知書が送付されてきたので、医療扶助によって入院費負担がなくなり、親族の心労も減ることとなり、安心して後見開始申立の準備を進めている。

以下に、おもな後見事務(財産管理)の概要を表にしてみました。

評価(概算)
資産 預貯金
876万円
負債  
470,052円
純資産  
-469,176円

【生活保護を受給する前】

評価(概算)
収入 障害年金(2級)
66,208円
支出 入院費用
40,200円
保険外負担金
24,180円
日常生活費など
10,000円
傷害保険料など
0円
利益  
-8,172円

【生活保護を受給した後】

評価(概算)
収入 障害年金(2級)
66,208円
支出 入院費用
0円
保険外負担金
0円
日常生活費など
10,000円
生活保護負担金
27,160円
利益  
29,048円